京都!?原発学習会「美浜原発事故問題」(摘録)

『東京原発』で思いっきり笑っていたあなた。美浜で起こった原発事故はもちろん笑い話ではすまされません。1月29日映画サークルの事務所で、地元美原で原発行政を批判し続けて来られた松下照幸さん(美浜町議員)に生々しい原発の事故と町の現在の状況のお話をしていただきました。

<美浜3号機の事故の背景>

 現地ではオープンに仕事をやっていると辛いことが多くて仲間を増やすこともできないんですが、ここ数年は私たちの言ってきたことが受け入れられるようになってきています。今から3年前に、行政側が財政難を理由に、商工会議所や看護婦協会等から陳情を出させて、もっと原発がほしいと言わせてきたのだけれど、私は、電力の自由化がせまる中、関西電力はもう原発を作らないと説明をしてきました。これが現実になってきました。関電は、町長に、もう作れないと話をしています。美浜原発は、一番新しい3号機でも28年、5〜6年すると1,2号機は40年を迎えます。この辺りから、停めていくということです。自由化の範囲が今年の4月から広がり、6割強が自由化、競争でシェアを奪われてきた分、火力発電の停止で調整をしていましたが、とうとう原発も止めなければならなくなってきています。美浜町にそう遠くない時期に原発がなくなる。最初に止めるのは美浜1,2号機であると予測しています。一方、厳しい競争環境の中、オーバーホール(定期点検・補修)も今まで3ヶ月だったのを1ヶ月程度でやってしまう。かなり手抜きをしなければならなくなってきています。

 こんなとき2004年8月9日に事故が起こりました。11人の方が死傷し、内5人の作業員が亡くなりました。1人重傷者が回復してきていますが、悲惨な事故でした。助かった人も「精神的」にショックを受け、職場復帰を出来ない人もいます。見えないところでも事故の後遺症があります。今回の稼働中の原発に定検準備作業で221人が入っていたのは、定検短縮のためです。たまたま休憩中であったが、事故があと数分遅ければ、100名以上が被災していたでしょう。

<事故の経過>

 さて、なぜこんな事故が起きたのか。1987〜1996年まで検査を委託された三菱重工の点検項目リストには登録されず、破断したところは28年間も放置されていました。定期検査の3割経費節約のため、関電の子会社(日本アーム)に委託しました。日本アームは検査業務を引き継いだ後、三菱重工のミスに気づき、関電に1999年4月、2000年8月の2回情報を流していました。関西電力側は11月にその報告を受けたが本年8月14日の定期点検まで放置しています。関電は調査を絶対にしなければならない。日本アームに伝えたが、日本アームは、他の原発の点検結果から「問題はなかった」として関電に伝えなかったといいます。日本アームは2003年4月、同11月、関電に検査提案し、関電は8月14日からの今回の点検で検査を予定することにしていたといいます。 
 「もう少し待っていてくれれば、検査をやっていた」という言い訳です。重大なことは、定期検査の短縮にあります。緻密な日程調整の中、問題があっても予定が狂い、巨大施設を止めると莫大なお金がかかってしまう。減肉が発生し易い場所で事故が起こっている。本来は、十分注意を図る場所。関電に運転する資格があるのでしょうか。米サリー原発2号機で同様な事故(1986年)が起きて4人が死傷しています。以来、「要注意」のものとして、管理手順を作っていて、起こった事故でもあります。
 関電の配管の老朽化対策では、「減肉傾向が認められるもので余寿命10年未満のものは、今後数回の定検で取り替える」となっています。「減肉傾向が認められ」なおかつ「余寿命10年未満」という限定がついている。3回続けて減肉が起きているものを「減肉傾向が認められる」というが、測定位置がずれて肉太りの結果が出れば、配管取替の対象ではなくなることになる。しかも、取り替える寿命(余寿命)は火力発電所のゆるい基準に変えられており、非常に、悪質です。
 また、日本の原発では、2年前余から定格電気出力一定運転から定格熱出力一定運転に切り替えられました。これで設備利用率が年間2幼度上がると計算されているが、当然、この分だけ、発電施設に負担がかかります。

<緊急炉心停止装置ECSSが作動した美浜2号機事故>

 91年2月に同じ美浜原発の2号機で蒸気発生器の細管が破断し、日本で始めて緊急炉心停止装置(ECCS)が作動し、大惨事一歩手前の事故も起きている。ECCSとはエマージェンシー・コア・クールダウン・システムの略称で緊急炉心停止装置なんてもんではなく「何が何でも原子炉の暴走を避けるために、壊れても良いから核反応を止めさせる」っていう最後の砦です。これによる熱ストレスで原子炉が壊れることもあるし、再使用出来なくなることもあります。
 美浜2号機では、1次系の蒸気発生器の細管1本が破断したことで事故が始まります。放射能を含む原子炉一次冷却水が、二次系に流れ込み、環境に漏れだしました。ECCS(緊急炉心冷却装置)は正常に作動しました。これで事故は終わるはずでした。しかし、ECCSの能力不足で原子炉への給水が不十分で、原子炉は2回沸騰しました。空焚き寸前だったのです。ところが、運転員は放射能の環境への放出を止めるため、ECCSを切る作業を開始しました。スリーマイル事故と同じで、やはり加圧器が満水なので、原子炉も満水状態と誤解していたのです。しかし、逃し弁は開きません。定期検査のミスで弁は固定したままだったのです。もしも、これが開けば、ECCSを切ることになり、スリーマイル事故の再現となっっていたでしょう。
 逃し弁が開かないので、運転員の操作が長引き、その間、ECCSは作動し続け、わずかですが水の供給ができて、原子炉の空焚きにならずに済みました。ECCSを切ったのは原子炉停止から50分後で、炉心の強烈な発熱は終了していて、助かりました。皮肉なことに、美浜原発は定検の重大ミスに救われたのです。原子炉の中で何が起こっているのか、運転員にも分からない、収束なのか、危険なのかの判断がつかない状態だったのです。このように、制御棒を降ろす行為は非常に危険で難しい行為であります。

<電気の自由化と原発事故の関係>

 今、電力市場の自由化により、本業が縮小されていく、投資を回収してきている。だから、関電は原発を将来、止める気でいます。本業が縮小していくのが自由化です。これは、アメリカによる相互主義への圧力である。関電は、持っている設備や人を他の部署に移し、火力は既に500万KWHほど止めてきています。政府の電力市場の自由化方針が明確になっていないので、関電は声を上げていませんが、発電と送電部門の分離という会社の分割だけは避けたいと考えています。
 今回の事故では元原発労働者への取材がカットされました。政府にとっても、事実を全部放送されたくなくて、放映はされなかった。こんな事を続けているとまたどこかで事故が起こってしまう。(NHKだけではないという事)
 分散型の発電施設なら、大きな事故が起これば、すぐに止めると思う。80万KWもの規模もあれば、事故が起これば何日もかけて温度を下げたり、上げたりしなければならない。何十億ものお金が止まる。関電全部の原発を止めれば、100億円は超えてしまう。だから、無理をして止めない方策を探る。また、下手に点検をしてしまえば、またボロが出てしまう。この辺が本音だと思います。関電は、止めたくなかったが、福井知事が業を煮やして、計画を作り停止を迫った。美浜1号、2号とも止めた。関電の言い分に乗っていたら、何をやるか判らない。
 配管の減肉化は水の乱流によって、配管内部の酸化皮膜が剥がれ、また、皮膜ができ剥がされることの繰り返しによって起こる。まめに点検しなければ、防げない。老朽化は、1ヵ所の破断が起きて衝撃が加われば、弁の作動状態や減肉などすべての要素が同時に進行していく。また、高温・高圧の水と放射能の放出があれば、電線も劣化する。今回の事故は老朽化の典型的な事故であった。
 また、原発の労働現場では、チョトしたミスがあっても次の工程のことを考えてしまい、正直に言えない。定期検査中は休みが取れない。徹夜の突貫工事、フラフラの下請け業者。仕事があっても4割のカット、利益なんか出ない。こんな契約でやっているから、安全に対する投資なんかできない。下請け業者の不満が最大限になってきている。昔は下請けが良い提案をすると報奨金が出たり、仕事が直ぐに取れた。今は、それもカットされ、自分が提案しても他の会社が仕事を取ってしまう。自由化を控えて、原子力コストを無理して切り下げている。
 多重防護、これはうそ。細管が破断し、150気圧の水が安全弁から放出される。放射能に汚染された蒸気(放射能で汚染された、鉄、酸素、水素、水等の放射性物質を含む)が外気に放出し、炉心を守るのです。実質的に燃料棒を守り、メルトダウン(原子炉が溶けて地下水と接触したときに起こる大爆発を防ぐ)防止のための1重の防護です。周辺住民を守るのではありません。

<原発赤字時代>

 電気が足らなくなればどうなる。電気は余っている。電気は余ってどうしようもないのが、現状です。正に供給過剰状態にあります。必要電力量は夏のピーク時に合わせているだけです。電力会社内部でもこの供給過剰状況を議論しています。今年の夏の暑い時期でも最大電力のピークを作らなかった。状況は変わってきている。北海道の泊原発(3号機出力91万2000kw2008年12月営業運転開始予定の増設計画が進んでいる)でも、下請けが値上げを要求しています。それを受けると赤字になってしまう。三菱電機の中でも「もう、勘弁してくれ」と声があがっています。電力業界のお偉方が、下請けに止めないでほしいと頼んでいる。原発は赤字になってきています。こんな中、老朽化している原発が稼動している、今が一番危ない次期です。こんなことをひた隠しにしながら原発を運転している。原子力の時代は終わった。同時に、とんでもない事故が起こる局面に差し掛かっている。県民の世論も大部厳しくなってきている。もう、原発の増設はできない。関電自身が言っているんです。しかし、今後は、住民と同じテーブルにつかないとダメ、原発の完全停止までソフトランディングを協力してやっていくつもりです。

<電気VSガス>

 電気の熱効率は大変低い。10箸療油で暖房する場合、電気なら25醗棉要になる上、送電ロスもあります。ガスの熱効率は8割、一方、原子力発電は3割、7割の熱を海に捨てています。オール電化などもってのほかだと思います。
 ただ、電気は安全という面はある。年齢を考えて、必要になれば、そうゆう生活をすれば良いが、わざわざ無駄にエネルギーを使って、原発を延命させる必要はありません。

<原発の経済>

 制度的には電気事業の独占と総括原価方式を作って、電力会社を引き込んだ。背景にはアメリカの誇大宣伝に騙されてという事もありますが、核兵器の技術の確保です。直接は作れないから、平和利用の隠れ蓑の中で平気としての技術を確保する。そうゆう意味では経済は度外視している。六ヶ所村の再処理工場もうまくいかないと思います。原燃も潰れるのではないですか。フランスは核兵器の技術と一体化しており、その原単位でのコスト提案です。日本は民間がやるため、コスト高になってしまう。高い負担の中で破綻してしまうでしょう。だから、経済的には成り立たなくなります。いずれ税金で負担することになる。最初から核燃料リサイクルは、税金の投入が前提になっています。

 


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